進化という概念は、日常生活でも頻繁に使用されるためか、誤った形で理解されている事が多い。よく見られるものは、次の三点である。ひとつは進化が目的を持っておこなわれている、という誤解。もうひとつは人間という種が進化の最終ゴールである、また、だから人間になれなかった他の生物よりもわれわれは立派な存在である、といったタイプの誤解。そして最後のひとつは、進化と進歩を混同している誤解。この三つである[33]。
進化に目的はない
テレビ番組などでは、(進化仮説の用不用説を引用して)「高いところの葉っぱを食べるために、キリンは首が長くなりました」とか、「これは生き残るための戦略だったのです」といった表現のしかたがごく一般的である。このような表現においては、比喩としての進化の自律性ばかりが強調され、そもそも偶然性・予測不可能性なしには存在し得ない自然の本質というものがすっぽりと見落とされてしまっている。いっぽう、たとえば以下のように表現すれば、ことの経緯をより正確に表現できるであろう。
「首の長いキリンの方が(短いほかのキリンより)多数の子孫を残せたため、結果として首の長いキリンばかりになりました」
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もっとも、適応は結果的に合目的に近い形で構造や行動を発達させる可能性もある。したがって、たとえば「太陽が東から昇り」と書く人は未だに天動説を信じている、というわけではないのと同様に、「?のために進化した」という言い回しを使う場合はあり得る。また、自然選択説も万能ではない可能性もある。 従って、1.適応できなかった種は、淘汰される(自然選択説)、2.合目的に近い形で構造や行動を発達させることで適応する(獲得形質の遺伝性)、といった現象を総合的に考慮して、例えば「?の方向に進化した」などが、より適切な表現となる。
人間は進化の頂点にいるのではない
人間中心主義にしばしば援用される誤用であるが、進化はハシゴのような一本道ではなく、木の枝のように多方に伸びていくもので、人間はその枝の一部である。(系統樹を参照)個々の種はそれぞれ異なった環境に適応してきたのであり、現在ある種もすべてそれなりに模索した結果といえるのである。また適応の過程に終わりというものはない。
一方で現在では雑種が進化の上で重要な役割を果たすことが知られている[要出典]ので、単純な枝分かれでなく網状に絡み合ったイメージの方が適切であると考えられている 。
進化は進歩ではない[34]
進化(英:evolution)とは狭義には「時間の経過に伴う生物集団中における遺伝子頻度の変化」であって、進歩(英:progress)という概念とはまったく別のものである。地中で生活するモグラの目が退化していることも進化の結果であり、クジラの手足が退化していることも進化の結果である。また人間に尻尾がないのも進化の結果である。
しかし、「進化」を意味する"evolution"はラテン語の"evolvere"(展開する)に由来し、単純なものから複雑なものへの順序だった展開という意味を含んでおり、日常語としては"progress"(進歩)という概念と強く結びついていた。さらに発生学の専門用語としては、前成説(=展開説、前成説と後成説を参照)を指す用語として使われていた。エラズマス・ダーウィンはこの前成説のプロセスを指す"evolution"を系統発生のプロセスを指す語に援用したが、「進歩」も「前成説」も「進化」とは相容れないものであったので、チャールズ・ダーウィンは「種の起源」(初版)の中では"evolution"という語を使うことを避け、"descent with modification"(変化を伴う由来)という語を使っていた。その後、ハーバート・スペンサーらの宣伝によって、「進化」を意味する語として"evolution"が定着したが、この語が「進化=進歩」という誤解を産むタネになってしまった
退化は進化の対義語である
一般的な用語としては、退化が進化の対義語であると位置づけられることがあるが、科学的には退化は進化の一側面であり、対義語ではない。詳しくは退化の項を参照されたい。
なぜヒトはサルから進化したのに、サルがまだいるのか?
ヒトはサルから進化したのではなく、サル(類人猿)との共通祖先から分化した。その共通祖先はサルに似ていた、或いは現生種とは異なるサルであると考えられるが、それはヒトの方が強い選択圧を受け、形質が大きく変わったのに対し、他のサルは生息環境が安定していて強い選択圧を受けなかった、あるいは、ヒトとは異なる方向への淘汰圧を受けたからである。全ての(サルに似た)共通祖先が一斉に人間に変化したと言うイメージは誤りである。また、ヒト以外の現生のサルも、ヒトが進化する期間にそれぞれ進化しており、ヒトの先祖と思われるサルは現生には存在しない。サルからヒトになったのではなく、ある種のサルが進化によってチンパンジーというサルやヒトというサルに分化したのであって、現時点でもヒトはサルである。